『四気』
1.春夏秋冬の四時の気をいう。
2.四性ともいう。寒・熱・温・涼の四種の薬性をさす。
温と熱、寒と涼は程度の差をさす場合もある。
薬性の寒涼と温熱は病証の熱性病証と寒性病証に相対して説明できる。
熱性病証を治療する薬物はふつう寒性または涼性薬物である。
たとえば黄連は寒薬であり、熱病の瀉痢を治療する。茵陳蒿は微寒であり、即ち
涼薬であるので黄疸の身熱を治療する。
寒性病の証を治療する薬物は通常熱性または温性に属する。たとえば、附子は
熱薬であり、大汗または陽気衰竭スイケツ、四肢寒冷などを治療する。
草果は温薬であり、即ち微熱であり、胸腹の冷痛と発冷の比較的重い瘧疾に用い
られる。
このほかに平性薬があり、性質は比較的和平であるが、実際上は寒や熱に偏って
いる。たとえば白茯苓は甘平で温に偏っており、猪苓は甘平で涼に偏っている。
故に微寒微温のものは四気の内に入るので、四気といい、五気とはいわない。
《神農本草経》「寒を療するに、熱薬を以てし、熱を療するに寒薬を以てす。」
『五味』
辛・甘・酸・苦・鹹の五種である。味が異なると作用も異なる。
辛味は散じ行らす働きがある。たとえば、荊芥は風寒を散じ、砂仁は気を行らし、川は活血の作用がある。
甘味は補緩の作用がある。たとえば、黄耆は補気、阿膠は補血、甘草は急変を緩解する作用がある。
酸味は収渋の作用がある。たとえば、山茱萸は虚汗を止める。
苦味は燥・瀉の作用がある。たとえば、黄連は火を瀉し、大黄は瀉下通便し、蒼朮は湿を燥する。
鹹味は堅を軟し潤下する。たとえば、海藻、牡蛎は瘰癧を治し、芒硝は燥結した大便を潤下させる。
《霊枢五味論》「五味之は口に入る也。各走る所あり。各病む所あり。」
『五味所合(ゴミノガッスルトコロ)』
五味と五臓の相互関係のこと。
《素問五臓生成編》「心は苦を欲し、肺は辛を欲し、肝は酸を欲し、脾は甘を欲し、腎は鹹を欲す、これ五味の合する所也。」
『五味所禁(ゴミノキンズルトコロ)』
五禁ともいう。五臓の病変時の五味の禁忌のこと。禁は避免と禁忌の意味がある。五味が五臓に帰することによって、五味の性には各々偏りがあり、偏すれば病を生じやすく故に必ず禁ずる所がある。
辛味はよく気分に走り、性は散を主どるので、多食すればよく気を消耗するので気病は辛味のものを多食してはいけない。
鹹味はよく血分に走り、多く食すれば血行が渋滞し、故に血病は鹹味を多食してはいけない。
苦味はよく骨に走り、心火をよく助けるので、多く食すれば火は盛んになり腎水を損耗するので腎は骨を主どり、腎は骨髄を生じるので骨の病気は苦味のものを多食してはいけない。
甘味はよく肌肉に走り、甘味には滞の性質があり、多く食すれば肌肉が太るので、肌肉の病気は甘味を多く食してはいけない。
酸味はよく筋に走り、酸味は収斂の性質があり、多く食すれば筋は拘急しやすくなる。ゆえに筋の病は酸味を多食してはいけない。
この五味の偏性は多食すると病にとってよくないので五禁といわれる。
《霊枢五味》「肝病は辛を禁ず。心病は鹹を禁ず。脾病は酸を禁ず。腎病は甘を禁ず。肺病は苦を禁ず。」
『五味所入(ゴミノイルトコロ)』
五入ともいう。五味は胃に入り、各々その好む臓腑に行く。すなわち酸は肝に入る、辛は肺に入る、苦は心に入る、鹹は腎に入る、甘は脾に入る。
五味の入る所は臨床上の薬物治療と関係が深い。
『五味所傷(ゴミノヤブルトコロ)』
五味を偏食することによる五体に対しての傷害のこと。
《素問五臓生成編》「多く鹹を食すれば、脈凝泣して色変ず。多く苦を食すれば皮槁して毛抜ける。多く辛を食すれば筋急して爪枯れる。多く酸を食すれば肉胝皺して唇掲す。多く甘を食すれば胃痛して髪落つ。此五味の傷る所也。」
『帰経』
薬物の作用を臓腑経脈に関連づけたものであり、その薬物がどの臓腑経脈の病変に治療効果があるかを説明している。
たとえば桔梗、款冬花は咳嗽気喘の肺経病を治療する事ができるので、すなわち肺経に帰入する。羚羊角・天麻・全蝎は手足抽畜の肝経の病を治療するので肝経に帰入する。
ゆえに帰経は治療後の観察により説明されたものである。一種類の薬物が二経、または数経に帰入する場合はその薬物の治療範囲が大きくなる。
たとえば杏仁は肺、大腸に入り、肺経の咳嗽を治療し、また大腸の大便燥結にも効果がある。沢瀉は脾・胃・腎・膀胱に入るので、これらの四経の水湿の病に常用される。